IT戦略|8分で読めます更新: 2026年6月5日

バックオフィスITを後回しにするほどコストが増える——見えていない損失を数字で整理する

バックオフィスITを後回しにするほどコストが増える——見えていない損失を数字で整理する
IT管理を後回しにしている中小企業ほど、気づかないうちにコストが積み上がっています。未使用SaaSの費用・生産性損失・セキュリティリスクなど、放置が生む4つのコスト構造と、増やさないための3つの基本対策を解説します。

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「今は大丈夫」——その認識がコストを静かに積み上げている

「PCが動いているし、特に大きなトラブルもない。IT管理にお金をかける余裕はない」——多くの中小企業の経営者がそう感じています。しかし、IT管理を後回しにしている企業ほど、実は気づかないうちに余計なコストを払い続けているケースがほとんどです。

問題は、このコストが「請求書」として明示されないことにあります。使われていないSaaSの費用、IT対応で止まった業務時間、未然に防げたセキュリティ事故——これらは会計上「IT費用」として見えてきません。だからこそ、後回しにしやすく、積み上がりやすいのです。

この記事では、バックオフィスITを放置することで実際にどのようなコストが発生しているかを数字で整理し、最小限のコストで管理できる体制をつくるための考え方を解説します。

バックオフィスITの放置がコストを生む4つのメカニズム

IT管理を後回しにすると、次の4つの経路でコストが増え続けます。どれか一つではなく、多くの場合これらが複合的に発生しています。

①使われていないSaaSの費用が積み上がる

「導入したけれど現場に定着しなかったツール」「退職した社員のアカウントが削除されていないツール」——こうした未使用・放置ライセンスは、IT担当者がいない企業ではほぼ確実に存在します。

SaaSの棚卸しを実施した企業では、月3万〜15万円程度の不要な費用が見つかることが珍しくありません。年間にすると36万〜180万円です。情シス代行の月額費用と同等か、それを上回る無駄コストが、ただ「誰も気づいていない」だけで支払われ続けているのです。

よくある放置パターン

月間コスト目安

退職者のSaaSアカウント(3名分)

¥3,000〜¥15,000

定着しなかったプロジェクト管理ツール

¥5,000〜¥30,000

重複機能のSaaS(例:Zoom+Teams)

¥5,000〜¥20,000

契約更新を忘れたままの有料プラン

¥2,000〜¥10,000

②IT対応による本来業務の中断が生産性を下げ続ける

総務や経理がIT業務を兼任している場合、PCトラブルの対応・入退社時のアカウント設定・社員からの「このツールはどう使うの?」という問い合わせのたびに、本来業務が止まります。

「1回の対応は15分程度」と感じていても、月に20〜30件積み重なると月5〜8時間が失われる計算になります。時給換算2,500円の担当者であれば、月1.2万〜2万円の生産性損失です。年間で14万〜24万円が、目に見えないまま消えています。

さらに問題なのは、この中断が本来業務の集中度を下げること。「ITの対応が来るかもしれない」という緊張感が続くだけでも、作業効率は低下します。

③セキュリティインシデントの対応コストは1件で数百万円規模

「中小企業はサイバー攻撃のターゲットにならない」は誤解です。むしろセキュリティ対策が手薄な中小企業は、大企業へのサプライチェーン攻撃の足がかりとして狙われるケースが増えています。

ランサムウェア感染や情報漏えいが発生した場合、対応にかかるコストは決して小さくありません。システム復旧費用・被害調査委託費・顧客への通知・場合によっては損害賠償——これらを合計すると、中小企業でも数百万円規模になることがあります。しかも、インシデント対応中は業務が止まるため、機会損失も加わります。

セキュリティ対策に月数万円かけることと、1件のインシデントで数百万円失うこと——どちらがリスクとして大きいか、数字で見れば明らかです。

④退職者アカウントの放置が情報漏えいリスクを高める

IT担当者が不在の企業では、退職者のSlack・Gmail・クラウドストレージ・業務SaaSのアカウントが削除されないまま残り続けます。悪意がない場合でも、元社員が個人端末から業務データにアクセスできる状態が続くことになります。

アカウントの棚卸しと削除は、一度フローを整備してしまえば月1〜2時間で完結する作業です。しかしその「一度の整備」が後回しにされ続けることで、リスクだけが積み上がっていきます。

放置コストの試算——5人規模でも年間100万円超になるケース

上記のコストを具体的な企業規模で試算してみます。従業員25名・SaaSを10種類使用・総務1名がIT業務を兼任しているケースを想定します。

コスト項目

月額換算

年間換算

未使用・放置SaaS費用

¥30,000

¥360,000

IT対応による生産性損失(総務担当)

¥20,000

¥240,000

セキュリティリスクの期待損失(年1件想定)

¥41,000

¥500,000

合計

¥91,000

¥1,100,000

もちろん試算には幅があります。しかし「ITに何もかけていないから費用はゼロ」は正しくありません。形を変えたコストが、別の場所で発生しているのです。

コストを増やさないための3つの基本

IT管理を大規模に投資することなく、放置コストを減らすために今すぐ着手できる3つの基本を紹介します。

①SaaSの棚卸しを年2回以上実施する

まず「自社でどのSaaSをいくら払っているか」を一覧にしてみてください。クレジットカードの明細・銀行口座の引き落とし履歴を確認するだけで、忘れていたサブスクリプションが見つかることがほとんどです。

棚卸しの際は「誰が使っているか」「月に何回使われているか」「同じ機能のツールが重複していないか」を確認します。半年に1回これを定例業務として設定するだけで、SaaS費用は確実に最適化できます。

②入退社時のITフローを1枚のチェックリストで標準化する

「入社したらどのアカウントを作るか」「退職したらどのアカウントを削除するか」を1枚のチェックリストにまとめます。人事・総務がこのリストに従って動けば、IT担当者がいなくてもアカウント管理の抜け漏れを防げます。

特に退職時のアカウント削除は優先度が高いです。退職当日または翌営業日中に全アカウントを停止・削除することを社内ルールとして明文化しておきましょう。

③月次でIT費用の全体を「一覧表」で把握する

IT費用が「どこにいくらかかっているか」を経営者や担当者が把握できていない状態は危険です。SaaS費用・保守費・外注費を含めた「IT費用一覧表」をスプレッドシートで管理し、月1回見直す習慣をつけましょう。

把握するだけで「この費用は本当に必要か?」という判断ができるようになります。IT費用の最適化は、まず可視化から始まります。

まとめ——IT管理は「コストをかけるか・かけないか」ではなく「どこにかけるか」の問題

バックオフィスITを後回しにすることは、コストをゼロにしているのではなく、見えない形で別のコストを払い続けていることと同じです。SaaSの無駄・生産性の損失・セキュリティリスク——これらを合計すると、適切なIT管理にかかるコストを上回るケースは珍しくありません。

IT管理の本質は「どこにかけるか」を判断することです。全部に投資する必要はありません。まず現状を把握し、コストを生んでいる部分を特定することから始めてください。

「自社のIT費用が適正かどうかわからない」「どこから手をつければいいかわからない」という場合は、バクティーの無料相談で現状を整理するところから始めることができます。

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